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酒さと尿路感染

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酒さと全身疾患の関係は昔から取りざたされてきました。体内に潜む慢性的な炎症が皮膚だけではなく、ほかの臓器にも影響を及ぼしているからだと言われています。この全身疾患とのかかわりを知ることは、酒さの原因を考える上でも重要だと言えます。

★酒さと大人ニキビは別物?

酒さは鼻や眉間、頬といった顔面を中心にお酒を飲んだ時の赤ら顔と大人ニキビが組み合わさった病気です。酒さという病名はあまり聞き慣れないかもしれませんが、症状の悪化と緩和を繰り返す特徴があります。酒さの発生は大人ニキビと似ているところもありますが、より複雑です。実際に酒さはこれまでは皮膚に限局した病気と考えられてきましたが、近年の研究成果から酒さと他の疾患の関連性が示唆されています。その例を見てみましょう。

★酒さと全身性の病気はどう関連しているの?

一番理解する必要があることは酒さの根底には何らかの原因による全身性の慢性炎症があることです。その原因の一つとして尿路感染症によって生じた炎症が全身に広がることによって肌のコンディションを悪化させている可能性も少なくありません。また薬との併用によって長期的に新しい合併症が生じる可能性も否定できないので、経過観察が重要になってくると思われます。

論文において研究者らは、酒さと慢性の全身性疾患の関連は立証できたものの、病態生理学的な関連は複雑でまだ解明できていないとしています。酒さと慢性の全身性疾患の関連は、炎症性サイトカインや代謝、免疫、内分泌の変化を含む慢性の炎症がある状態が元にあるメカニズムに関連している可能性があるとしています。
マイクロバイオームもまた皮膚や呼吸器、消化器、尿路系などの病気と酒さを関連付ける一つの要因かもしれないと研究者らは指摘しています。
マイクロバイオームとは聞き慣れない言葉かもしれませんが、体内に棲息しているマイクローブ(微生物)の集合体(オーム)のことを言います。一番有名なのが腸内フローラですが、実は皮膚にも細菌叢があり、この乱れが酒さをはじめとする慢性の皮膚の病気につながっているということが徐々に知られています。ちなみに人間の体の中には、異なる数千種の細菌を含む驚異的な100兆ものの微生物が皮膚、口腔、鼻腔、耳管、胃、腸、膣と体の隅々に生息していて、重量は最大2kgあるとも言われています。

★酒さは全身性疾患と関連する

米国ジョンズホプキンス大学の研究グループによる最近の研究から、酒さはアレルギーから心血管系疾患やがんに至るまでの広範な領域にわたる慢性の全身性疾患と関連していることが示唆されています。

酒さと全身性疾患についてを調べたジョンズホプキンス大学の研究があります。

酒さと診断された患者さん65名と酒さに罹っていない65名から、詳細な病歴や現在の健康上の問題、人種、年齢、収入、教育レベル、就業状況、居住地域などといった人口統計学的な情報、喫煙の習慣やアルコールの消費、カフェイン摂取、日光にあたっているかといった生活習慣のアンケートを実施し、そのデータを比較解析しています。酒さ罹患群(酒さに罹っている人たちのグループ)の平均年齢は51歳、66%が女性で、95%が白人でした。重症度別では、軽症の酒さの患者さんが58%、残りの42%の患者さんは中等症から重症の酒さでした。但し、健康状態は自己申告で、カルテと薬の使用を通して確認しています。

★酒さの人に多い全身性の病気にはどんな病気がある?

酒さの罹患者は下記のような病気や症状に罹りやすいことが研究で明らかになりました。

  • 食物または空気中のアレルゲンによるアレルギー
  • 喘息といった呼吸器系疾患
  • 逆流性食道炎や他の消化器疾患
  • 高血圧、糖尿病といった代謝性疾患
  • 尿路感染のような泌尿生殖器疾患
  • 女性ホルモンのアンバランスによる不調

★尿路感染症とは?

尿路感染症とは、腎臓から尿管、膀胱を通って尿道口にいたる、尿路に病原体が生着して起こる感染症のことを言います。尿路感染症は、尿路に細菌、ウイルス、真菌などが感染することによって起こります。とくに女性は尿道が短いため、尿路感染症にかかりやすいといわれています。主な尿路感染症には「腎盂腎炎(じんうじんえん)」、「膀胱炎」、などがあります。

膀胱炎:排尿時に痛みを感じたり、頻尿や残尿感が認められます。また、尿に膿が混じることからにごって見えたり、赤い尿(血尿)が生じることもあります。

腎盂腎炎:悪寒や震えを伴なう38度以上の高熱がでます。熱は上ったり下がったりします。腰が鈍く痛むことも特徴の一つです。尿に膿が混じり、にごりがみられます。

★酒さと尿路感染の関連性

尿路感染は、よくある細菌の感染症で、世界中で毎年1億5000万人もの人が罹っている病気です。新生児の男児や年配の男性、全ての年齢の女性でかかってしまう可能性があります。2007年のアメリカの統計では、全診断科の訪問者の0.9%に当たる1050万人が尿路感染のため病院を訪れており、そのうち200〜300万人が救急外来を受診していました。尿路感染症は多発性硬化症や関節リウマチ、骨粗しょう症、高血圧、慢性疼痛の罹患者において報告されています。
米国食品医薬品局(FDA)のデータを元に行った解析によると、酒さの患者さんのうち、特に女性で50代、Finacea®(アゼライン酸;ニキビ治療薬)を服用していて喘息を罹患している人において、尿路感染が見られることが報告されています。
この解析では、酒さと尿路感染症を患っている22名(内訳:男性4名、女性18名)を対象にしています。年齢は50代が55%、60代以上が45%、併存症で多かったのは多発性硬化症(6名)、高血圧(6名)、喘息(6名)、糖尿病(5名)、便秘(4名)でした。これらの人のうち、5名がLasix®(利尿薬)、5名がFinacea®、3名がVasotec®(ACE阻害薬;高血圧症治療薬)、3名がFosamax®(骨粗鬆症薬)、3名が葉酸を服用していました。罹患者の症状としては、転倒(7名)、慢性疲労(5名)、不眠(4名)、不安症(4名)、膝蓋大腿疼痛症候群(3名)でした。

 

【渋谷セントラルクリニックDrコメント】
酒さの遺伝的原因や環境要因は完全には明らかにはなっていません。一つ言えることは数々の要因が重なり合うことによって酒さという病気になっているということです。そのため大人ニキビや赤ら顔にだけ目を向けるのではなく、体の中に気が付かない炎症が潜んでいることを認識する必要があります。その中の一つとして尿路感染症は見逃すことのできない疾患ということになります。

本文中にもあったようにマイクロバイオーム、最近の腸内環境、皮膚環境は肌だけではなく全身の疾患に関係していると思います。

参考
http://www.nature.com/nrmicro/journal/v13/n5/pdf/nrmicro3432.pdf

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