ペインクリニック
当院では東京慈恵会科大学ペインクリニック科と連携してペインクリニック診療を行っております。基本的には他院からのご紹介患者様を中心に拝見させて頂いております。
慈恵医大のペインクリニックで働いていた私、大友は診療部長の北原医師が提唱して概念に賛同して恵比寿にジムを作りました。
北原部長の提唱している概念は以下の通りです。
- 太っていると痛みが減らない。痛みが一時的に減っても直ぐにぶり返したり、生活レベルが上がらない
- 痛みが慢性の経過をたどっている場合は、痛くてもカラダを動かさなくては良くならない
- 心身ともに健康であることが、痛みを治療するうえで重要
痛みのある患者様にダイエットして頂いたり、カラダを動かしていただくことは想像以上に大変でした。
始めはジムでしたのでエクササイズ中心でしたが、栄養の重要性に気がついたことからクリニック形態にして採血などの検査が出来るようにしました。そうした患者様を治療してきたノウハウが現在のダイエットプログラムやアンチエイジング治療に活かされています。
当院では痛みを減らす、なくす治療だけではなく、痛みのために制限されていた生活や趣味に戻ることを重視した治療を行っております。
多くの慢性の痛みは筋・筋膜の痛みが重要
筋筋膜性疼痛症候群について
東京慈恵会医科大学ペインクリニックで筋筋膜性疼痛症候群についてお知らせしているパンフレットを参考にご説明いたします。
筋筋膜性疼痛症候群とは ’慢性のひどい筋肉のコリ’ のことです。
’筋肉のコリ’は’ たいした事のない痛み’ とか ’風呂にでもつかってほっておけば治る’ と考えられていました。しかし何週間も、何ヶ月も、時には何年間も続く ’慢性の筋肉のコリ’ についてはあまり注目されてきませんでした。
これらの痛みはマッサージやお風呂で一時的には楽にはなってもなかなか完全には良くなりません。
結果として頭痛・首、肩の痛み、背中のコリ、腰痛となって人々を苦しめます。
最初は骨折、手術後の痛み、帯状疱疹等の明らかに原因のある病気や怪我だったのにもかかわらず、元の病気が治った後にも痛みが続く場合に筋筋膜性疼痛症候群である可能性があります。
あまり知られていないことですが筋肉の痛みは多くの表現をします。
ビリビリとした痺れや灼熱感を持った焼けるような痛みや電気が走るような痛みなどは筋筋膜性疼痛症候群でも起こりえます。
それだけではなく、筋肉の痛みはかなり強い痛みを引き起こします。
ex.人間の感じる痛みの中で最もひどい痛みに数えられるお産の痛みも (指を詰めるのと同じ位の痛み・・?) 子宮という筋肉の固まりが起こす痛みです。
これほどひどい痛みを引き起こす筋筋膜性疼痛症候群が診断されにくいのかには理由があります。
筋肉の痛みは画像診断法 (CTやMRI) や血液検査で特徴的な結果を示すことはないからです。
但し、診断する方法が無いわけではありません。
筋筋膜痛症候群を疑わせる所見は以下の3つです。
- ① 筋肉が疲労しやすくなっている
- ②筋肉が固くなって伸びにくくなっている
- ③押すと痛みを感じる固くしこった点が筋肉内にある
- 筋肉が疲労しやすくなっている
- 例えば夕方になると痛みが増してくるとか(本当にひどくなると朝から晩まで痛いと言う人もいますが・・・)、お風呂に入ると痛みが楽になるといったことです。
- 筋肉が固くなって伸びにくくなっている
- 筋肉が固くなって伸びにくくなっているとは、専門的に言うと関節可動域(ROM)が制限されることです。
→一言で言うなら‘カラダがかたい’ということです。首を曲げたときに顎が胸に付かないとか、首を回したときに肩甲骨が見えない、首を横に傾けても45度以上曲がらない状態のことを言います。 - 押すと痛みを感じる固くしこった点が筋肉内にある
- 痛みを感じている場所の周辺に押すと痛みを強く感じる場所があることです。
(割と親指でしっかり押さないと分からないかもしれません)
筋筋膜性疼痛症候群を正確に診断する方法は筋肉内刺激法です。
筋肉内刺激法とは非常に細い針を使ってトリガーポイントを探す方法です。
そのうえで筋肉を強く押すことにより、痛みが放散する場所を見つけていくのです。
トリガーポイントを見つけ出すのには非常に経験と訓練が必要です。
トリガーポイントは痛みを感じている場所と必ずしも近いわけではありません。
ですから治療者がトリガーポイントだと思って注射やハリ治療をしていても『効かない』っということは十分に考えらえます。
【図1】 脚の痛み
×:トリガーポイント 赤い部分:関連痛
図は 『Myofascial pain and Dysfunction The Trigger Point Manual』 より引用
【図2】 膝の痛み
×:トリガーポイント 赤い部分:関連痛
図は 『Myofascial pain and Dysfunction The Trigger Point Manual』 より引用
【図3】 肩の痛み 棘上筋の筋筋膜性疼痛症候群
×:トリガーポイント 赤い部分:関連痛
図は 『Simons Myofascial Pain and Dysfunction. The Trigger Point Manual VOLUME 1 The Upper Body』 より引用
【図4】 肩の痛み
×:トリガーポイント 赤い部分:関連痛
『Simons Myofascial Pain and Dysfunction. The Trigger Point Manual VOLUME 1 The Upper Body』 より引用
筋筋膜性疼痛症候群の治療として推奨されているのは
- ① 専門家の指導下でのエクササイズ(筋力トレーニング・ストレッチ・マッサージ)
- ② 十分な深い睡眠
- ③ トリガーポイント療法(局所麻酔薬or筋肉内刺激法)
- ④ リラックス
【手のしびれを訴えた45歳女性の例】
患者様はデスクワーク中心のライフスタイルです。
頸椎のMRIにて6番に神経が当たっていると指摘され、整形外科にて神経ブロック治療されていたようです。
私がはじめて診察した時に以下のような身体所見を認めました。
- ①肩、背筋の筋力低下
- ②腱反射は正常(脚気の検査のアレです)
- ③親指の内側に感覚低下と知覚過敏(allodynia)を認めました。
- ④姿勢に応じて悪化する肩、腕、前腕の痛み
この患者さんに対して、トリガーポイント治療、浅頸神経節ブロック、柔軟性の向上・筋力アップを目的として加圧トレーニングを行いました。
頸椎を中心にトリガーポイント(発痛点)を探したところ、頸椎の6番、7番の傍らに腕や肩に痛みが放散する場所を見つけました。
そこに0.5%ブピバカイン(高濃度の麻酔薬)のトリガーポイント注射をしたところ3度の治療で痛みは劇的に改善しました。
現在は痛みの再発予防のための筋力アップを目的として加圧トレーニングを用いたリハビリをしておられます。
コラム
私がエクササイズ(運動療法)に重きを置いたクリニックを始めようと思ったきっかけが筋筋膜性疼痛症候群との出会いです。
私にとって筋筋膜性疼痛症候群はペインクリニックで働きだすまで聞いたことが無い病名でした。
大学のペインクリニック外来で診察をしていると身体所見では特に目立った症状が無いにもかかわらず強い痛みを訴えている患者さんをよく拝見いたします。(身体所見:感覚が低下したり、脊髄反射が鈍くなったり、筋力が落ちているなどの他覚的所見のこと)
大学病院を受診される多くの方が痛みの主な原因として『心因性』と診断されていることが少なくありません。
なぜこうなるかというと、筋肉が強い痛みを生じる‘臓器’だという概念が医療者側に余りないからだと思います。
ですから神経が問題ない(ex.手術をして神経の圧迫を取っている)にもかかわらず、痛みを訴えていると原因がわからなくなるわけです。ただ、筋肉が痛みを引き起こすという概念で患者さんを診察すると原因不明といわれていた多くの方の痛みの原因が筋筋膜痛症候群で説明されることが少なくありません。
僕が筋筋膜痛という概念に出会ったのは、慈恵医大のペインクリニックに北原雅樹先生が赴任された時です。
筋肉そのものが非常に強い痛みをおこすという概念で患者さんを拝見するとそれまで原因不明と思われていた痛みの治療がスムーズに進んだことを今でもよく覚えています。
ただ治療をしていると痛みが生じてからある程度の期間が経過した患者様がトリガーポイント治療に反応しにくいことにしばらくして気がつきました。
北原先生はこうした患者様にはカラダをほぐすようなストレッチングと全身に血流を行き届かせるための軽い有酸素運動が重要と説いておられましたが、痛みのある患者様にエクササイズをしていただくことは非常に難しいことを実感いたしました。
どうにかこうした患者様にエクササイズをしていただく場所をご提供できないかとスタートしたのが当クリニックです。エクササイズは数か月の時間はかかりますが、徐々に筋肉の異常な緊張をほぐすのに有効で徐々に痛みを感じなくなってきます。
渋谷に移転したことを機に、栄養療法にも気を払うことにより多くの患者様に筋筋膜性疼痛症候群に対する総合的な治療を行える施設が作り上げられたと考えております。これからも大学病院を始めとする施設と提携しながらより良い医療をご提供できるよう努力してまいる所存であります。

